患者さんと私は「友人」
島に癒しの風吹かす

 

 「うむやすみゃあす・ん診療所」の院長。今年の8月1日に開院した。診療科は、脳神経外科、神経内科とリハビリテーション科。診療のバリアフリーを目指して聴覚障がい、視覚障がいの人達や、日本語を母国語としない人達も気軽に受診できるようにと一般外来とは診察日を別に設け対応する。患者さんたちと「どぅす(友人)」になることが居心地のいい医療に結び付くと有志と連携で「どぅすぬ会」(伊波洋一会長)も立ち上げた。島各地で行う医療相談会に参加するお年寄りともどぅすのように接している気さくな人柄。地域医療に懸ける情熱は、島に癒しの風を吹かせている。


 うむやすみゃあす・ん診療所院長  竹井 太さん(50歳)
 

 遠慮のない関係が大事
 二〇〇一年に宮古島徳洲会病院の院長として赴任した。その間、島の医療の現実を肌で感じた。宮古では患者が医者を敬い過ぎて十分に意見がいえない風土がある。医者と患者は遠慮のない信頼関係を築くことが大切。どぅすならなんでも気軽に話せるし馬鹿なことでも言い合える。その相手が医者なら…いいでしょう。医者と患者の心が通い合わないと「病(からだ)」は治せても大切な「気(こころ)」は治せない。
 
安心の時間づくりが仕事
 医療で肝心なのは、院内にいる時だけでなく、院を出てもどれだけ安心をして過ごせる時間を作れるかどうか。それが自分の仕事と思っている。医者とのつながり方で医療はいくらでも変わる。宮古ふつ(宮古方言)で言えば「うむやす(安心)みゃあす(楽)」でいられる時間を作ることかな。
 
地域医療の現実
 宮古には「足りる医療」もたくさんあるが「足りない医療」もまだまだ多い。島の人たちにその現実を知ってほしくて、島にはストックのないRH(−)血の供血者登録も二年前から始めた。島の医療には予防医学が欠かせない。でも島の中だけの情報では不十分。外から様々な情報を積極的に取り入れ宮古島風にアレンジしたメニューで島で生かす。認知症進行予防から生活習慣病予防、禁煙指導認定も受けた。準備は万端。でもその前に長寿老人と短命若者が同居する宮古の医療現実。島民全体の意識改革が必要だと思う。無駄に命をすり減らすことはやめましょう。
 うむやす(安心)・みゃあす(楽)医療発信基地に
 島だけでは対処できない医療を提供する目的で、島嶼(離島)医療コーディネーターと銘打って勝手に始めた。幸い大学で過ごした間にどぅすのエキスパートが全国にいる。すでに何人かの患者さんの治療をお願いした。医者のしゃべる専門用語も難しい。小学校4年生の子供にわかるように説明できるように心がけ、「意味わからん」人のために医療通訳も始めた。患者さんには、遠慮なく身も心もうむやすにゆだねていただける医療を提供したく思う。
 

ん・どぅすぬ会/身近で親身な医療作り   伊波洋一会長
 この会は、患者さんと主治医がどぅす(友人)になり、社会背景や老若男女の分け隔てなく、遠慮のない会話やお付き合いできる間柄になり、「高くて遠い医療」を「手の届く安心できる医療に近づけること」、また「みんなで守ろうみんなの命」を合い言葉にして、一人でも多くの「どぅす」を募り、「こころも身体も健康で安全にともに過ごせる島づくり」をするための集まりです。参加資格は本音でしゃべること。会員は約百名、現在も募集中。